走っても痩せないのは「脳のせい」説

――最適化の結果、まだ“減量フェーズ”じゃないだけ。


1. 「走ってるのに痩せない」──ランナー永遠の悩み

ランナーにとって「走ってるのに痩せない」はもはや挨拶のようなものだ。

週に80km、いや100km走ってる人だっている。
平日は朝ラン、週末はロング走。
食事もそれなりに気をつけている。
お菓子も控えている。いや、控えていない。アイスはお菓子じゃない。

それでも──
体重計の数字はピクリとも動かない。
どころか、少し増えているときさえある。

「これだけ走ってるのに何でだよ!」
と、風呂場で叫んだ経験のあるランナーは多いはずだ。

でも不思議なことに、動きは明らかに軽くなっている。
疲れにくい。呼吸が楽。脚の回転がスムーズ。
鏡で見ても、なんとなく引き締まっている気がする。

そして極めつけは──
スーツのズボンが少し緩くなっている。

体重計は嘘をついてないけど、
“数字だけでは見えない変化”が確かに起きている。


2. 痩せないのは努力不足ではなく、「脳の最適化」

ここで登場するのが今回の主張だ。

走っても痩せないのは、脳が勝手に最善を選んでいるから。

人間の体は、意識よりもずっと深いレベルで「生存最適化」をしている。
つまり、脳が「今の状態が一番安全で走れる」と判断している限り、体重は減らない。

過度な体重減少は、脳にとってリスクだ。
免疫が下がり、ホルモンバランスが崩れ、パフォーマンスも落ちる。
“飢餓状態”とみなされれば、脂肪を守るよう命令を出す。

だから、どれだけ走っても脳がブレーキをかける。
「こいつ、長距離走るけど死にそうではないな。じゃあ維持しよう」
それが、体が今のままをキープしている理由。

脳は、脂肪を「敵」ではなく「保険」として扱っている。
もしもの時の燃料であり、ホルモンの材料でもある。
それを減らす判断を下すには、“安全である”という確信が必要なのだ。


3. 走りながら「痩せよう」としていない自分

もう一つの理由は、無意識の目標設定にある。

走っているとき、頭の中にあるのは「痩せたい」ではなく「より長く走り続けたい」だ。
この違いが大きい。

痩せることを目的にする人は、カロリー収支を気にする。
でもランナーは、どちらかというと「エネルギーを切らさないこと」を考えている。
食べることは悪ではなく、むしろ“走るための投資”だ。

この意識の違いが、脳の行動プランに影響を与える。
脳は「痩せるよりも、走れることが大事だな」と判断し、
体を“燃費の良いエンジン”に最適化する。

結果として、体は引き締まるけど、数字としての体重は変わらない。
つまり、「痩せようと思ってない」から痩せない。
もっと言えば、「今の体で走れる」と脳が確信している限り、痩せる理由がない。


4. 体重の“数字”が変わらない理由

数字が変わらない背景には、もう少し生理学的な理由もある。

長期的に走ると、筋肉が微細に損傷し、その修復のために一時的に水分を保持する。
これは「炎症性浮腫」といって、見た目や体重に表れる。
特にロング走や閾値走を重ねている時期は、常に体が“修復モード”に入っている。

筋肉は水分を含むと重くなる。
だから、同じ脂肪量でも体重は一時的に増加する。

体が締まっているのに、体重が減らないのはこのためだ。
つまり、「変化してないように見えて、実は内部では進化中」という状態。


5. 痩せる時期は“勝負フェーズ”に入ったときに来る

脳が「いよいよ本番だ」と判断した瞬間、
体は次のモードに入る。

たとえば、フルマラソンやウルトラなど、
“レースで勝ちにいく”フェーズ。

ここで初めて脳が、「軽さ」を優先する判断を下す。
速さを求める=余分を削ぐ必要がある。
安全性よりもパフォーマンスが優先される。

それが、「減量フェーズ」の始まりだ。

つまり、脳はこう考えている。
「今までは完走優先だったけど、これからは勝負だな。よし、軽くしよう。」

このスイッチが入った瞬間、
自然と体重が落ち始める。
食欲の方向性も変わる。
“重いものを食べたい”から“軽く動けるものが欲しい”に変化する。


6. 今のフェーズは「土台づくり」

まだまだ本番じゃない今の時期は、むしろ“土台を厚くする時期”だ。
脂肪も筋肉も、エネルギーを貯める装置として機能している。

この時期に無理に絞ろうとすると、体が悲鳴を上げる。
練習の質が落ち、回復が追いつかず、ケガにつながる。

マラソンの世界で「痩せた=速い」は必ずしも正解ではない。
むしろ「強い=痩せすぎていない」なのだ。

体重は減らなくても、走力は上がっていく。
心拍数が下がり、ペースが上がり、距離を重ねても体が壊れない。
そのすべてが、脳の最適化の結果。


7. 「痩せない=失敗」じゃない

世の中の多くの人は、「痩せたかどうか」で成果を測る。
でも、ランナーにとっての成功指標はそこじゃない。

・今日も走れた
・昨日より心拍が安定した
・スピードが上がっても呼吸が乱れない
・疲労が残らない

この積み重ねこそが“進化の証”だ。

脳は、そうした体のフィードバックを感じ取って最適化を進める。
だから、「痩せない=停滞」ではなく、「安定している=成功」なのだ。


8. それでも痩せたいときに意識すべきこと

もし「そろそろ軽くなりたい」と感じたら、
やるべきは「走る量を増やす」ことではない。

・睡眠を最適化する
・食事のタイミングを整える
・ストレスを減らす

この3つをやるだけで、脳は“安全モード”を解除する。
「この状態なら軽くしても大丈夫だな」と判断すれば、
自然に脂肪燃焼スイッチが入る。

努力というより、“安心させてあげる”ことがポイント。
脳を敵にせず、味方につける。


9. 最後に

走っても痩せない理由を、
「努力が足りない」と片付けるのはもったいない。

脳が慎重に“走るための体”を作ってくれているだけ。
今はまだ、筋肉も脂肪も、次の進化のために必要なパーツだ。

焦らず、今のフェーズを味わおう。
そして“勝負フェーズ”に入るその日まで、体を信じて積み重ねる。

……と、ここまで真面目に書いておいてなんだけど──

「今はまだ減量フェーズじゃないから痩せない」

はい、ただの言い訳です。もうちょい痩せます。。。


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