「ゾーン2で走れ」──本やYouTube、書籍でよく見かけるフレーズです。理論上は正しいのでしょう。でも、フルマラソンを完走していてもサブ5未達の私にとって、ジョグですら心拍は160を超えます。そんなとき、「ゾーン3はオーバーワーク」と言われてもピンときません。理論と実際の体感には、想像以上に大きなギャップがあるのです。
私が走っているとき、心拍はしばしば自分の感覚以上に高くなります。朝ランで少し強めにペースを上げただけでも、160を超えることは珍しくありません。坂道や暑い日、体調が万全でない日などはさらに心拍が跳ね上がります。こうした数値を目にすると、「自分は間違っているのでは」と焦ってしまう瞬間もあります。しかし、この「高い心拍」が必ずしも悪ではないことを理解することが、ランニングを長く続ける上での大前提です。
心拍が高くなる理由と現実
私の心拍が高くなるのには複数の理由があります。まず、心肺機能の適応がまだ十分ではないこと。フルマラソンを完走できても、サブ5未達の私の心肺は、長時間の持久走に完全には慣れていません。そのため、ジョグ程度のペースでも心拍が上がりやすいのです。
次に、ランニング効率の未熟さ。上下動が大きかったり、肩や腕に力が入っていたりすると、無駄に酸素を消費します。呼吸が浅くなり、心拍が上がるのもこの影響です。さらに、精神的な緊張も大きな要因です。「このペースで大丈夫か」と考えるだけで体は緊張し、心拍が跳ね上がります。外部要因も無視できません。睡眠不足、気温、湿度、カフェインの摂取など、日常のちょっとした条件で心拍は変動します。最後に、手首心拍計などの測定誤差もあるため、数字だけを見て一喜一憂するのは危険です。
こうした理由により、フルマラソンを完走しても、サブ5未達の私にとって心拍が高くなるのは自然なことです。大事なのは、心拍に振り回されず、体感と呼吸を優先すること。心拍はあくまで目安であり、絶対値ではないのです。
ゾーン理論と現実のギャップ
心拍ゾーンは一般的に5段階に分かれます。ゾーン1は非常に楽で回復ジョグ向き、ゾーン2は有酸素ベースで持久力向上に最適、ゾーン3はテンポ走レベル、ゾーン4は乳酸閾値域、ゾーン5は全力です。理論上、初心者はゾーン2で長時間走るのが正しいとされています。しかし、私のようなランナーにとって、ゾーン2で楽に走れることはまだ遠い現実です。ジョグでも心拍はすぐ160を超え、会話もギリギリ。
多くの書籍や動画では、「ゾーン3は中途半端でオーバーワーク」と言われます。確かにトップランナーにとってはそうでしょう。しかし、私の現実では、ゾーン3で走ることが最も効率的な成長ゾーンです。週3〜4回、1時間前後の練習で、呼吸がぎりぎりできるゾーン3で走る方が、無理にゾーン2に抑えるよりも持続可能で、体も効率よく成長します。
実際の練習では、肩や腕の力を抜き、歩幅とピッチを整えるだけで心拍が5〜10程度下がることもあります。フォームを意識し、体感と呼吸を優先することで、心拍の高さを怖がらずに走り続けられるのです。
大会での心拍体験とオーバーペース
大会になると、心拍の暴上がりはさらに顕著です。ハーフマラソンで「そんなにスピード上げていないつもり」でも、周りの雰囲気に飲まれ、つい流されてペースが上がることがあります。その結果、心拍が一気に170を超えることも少なくありません。短時間なら体は耐えられますが、長時間続けると乳酸が溜まり、脚も呼吸もきつくなります。「命の危険?」と思うほどの数字にドキッとする瞬間もあります。しかし、ここで重要なのは心拍に振り回されず、自分の体感・呼吸・脚の状態を優先することです。
大会ではスタート直後の興奮に流されやすいですが、自分の体感ペースを守ることが肝心です。心拍が上がりすぎても、無理に抑えようとせず、少しペースを落とす判断ができれば、後半で失速するリスクを大きく減らせます。また、ゾーン3程度の心拍で短時間なら問題ないと割り切ることで、精神的にも楽に走れます。
成長の旅路としてのゾーン3
結局、今の私にとってゾーン2は未来の目標であり、ゾーン3は現実的な旅路です。心拍が高くても、それは成長の証。焦らず、体感と呼吸を優先してゾーン3で走ることで、少しずつ心肺が強くなり、いつか同じペースでも心拍が下がり、自然にゾーン2で走れる日が来ます。
私の経験から言えることは、心拍理論を知るだけでは成長できないということです。体感・呼吸・フォーム・メンタルのすべてを合わせて、自分のゾーンを理解することが、ランニングを長く続けるための最も現実的な方法です。大会でオーバーペースになっても、失敗から学びを得ることができるなら、それもまた成長の一部です。心拍に振り回されるのではなく、ゾーン3での旅路を楽しむ──それが、私のリアルなランニング体験から導き出した結論です。

